『西暦2100年、明治神宮の“いのちの森”は、東京を救う』
~100年先の森づくりを今から始める。東京の再生、いのちの再生は明治神宮の“いのちの森”から~
表参道のケヤキを植え替えるという話しを耳にしました。とても心が痛みました。89年前に明治神宮の杜ができた時、表参道の整備と合わせて植林されたケヤキだとうかがいました。100年近く生き続けているいのちであり、明治神宮の杜とは兄弟のような木々だと思いました。
明治神宮から代々木八幡神社に向かう途中には、「春の小川プレーパーク」があります。ここには「ケヤキくん」と名付けられた大きなケヤキがあります。やはり幹線道路沿いなためか痛んでおり、伐採される運命でしたが、「春プレ」の親子たちが、根元に小さく深い穴をたくさん空けて通気を良くしたり、懸命に努力して、先日樹木医さんから、健康な状態に戻ったとお墨付きを受け、伐採を免れました。
「緑の回廊」(コリドー)というものがあります。森が開発などによって分断され、動植物が自由に行き来できなくなったことへの対処として、野生生物が自由に往来できるグリーンベルトを造るものです。国内では主に国立公園で実施されています。
明治神宮の森には、“野生”(ワイルダネス)があります。都心の野生生物にとっての“母なる森”です。
現代人は都市の緑化を目指していますが、壁や屋上を人に都合のいい程度に“緑色”にしているだけかもしれません。残念ながら、そこに自然=多様ないのちの営み を観ることはできません。
これからの東京について考える時、そして100年後という長期ビジョンを思い描く時、今のコンクリート砂漠の都市にいかに野生を取り戻し、人がいかにして人間性を取り戻すかが、カギだと思っています。それは、新たに自然を造るのではなく、今ある自然(野生)を母として拡がることだと思います。
バードアイ(鳥の目線)で見るなら、郊外では山から川を伝って下流へと“いのちの種“は拡がっていきます。それを東京都心に置き換えるならば、明治神宮の自然が、周辺にじわじわと拡がることだと思います。それは、表参道を通って、小川の流れを伝って、地下水脈を辿ってかもしれません。
西暦2100年の東京・・・。表参道からは車がいなくなり、車道のアスファルトは剥がされ、ケヤキ並木を中心に、中〜低木が茂る幅の広いグリーンベルトが青山までつながり、明治神宮に棲む鳥・小動物・虫・昆虫・種子などの生き物たちが、表参道を自由に行き来しています。そこはまさに「いのちの回廊」です。
「いのちの回廊」は、青山通りを抜け、絵画館や神宮球場周辺を結び、新宿御苑を結び、お堀端を通って、皇居とも繋がっています。都内の主要な公園や緑地は、水の道、植物の道を通じて結ばれています。東京は、いのちあふれる街へとシフトし、人々もまたいのちの力を敬い、いのちみなぎり、いきいきと生きています。
そんなビジョンを描きながら、「いのちの森」の活動が、まず時間をかけて表参道・原宿へと拡がってゆけないかと考えています。荒唐無稽なストーリーかもしれませんが、私たちには夢が必要です。ケヤキ並木が悲鳴を上げているのは、現代人へのシグナルだと思います。従来通りの伐採〜植樹という対処法ではなく、いのちのつながりを大切にしながら、新たなチャンスを創造していきたいものです。
神宮の杜は、まさに奇跡の森であり、東京の未来への希望だと思います。明治神宮から始まる「いのちの森」活動が、未来への希望へとつながることを切に願うばかりです。
文責:河内聰雄(いのちの森実行委員会事務局長 2009年12月)


